75年続く、アイス専門店生き残りの秘訣:横山冷菓株式会社 横山栄一郎氏

75年続く、アイス専門店生き残りの秘訣:横山冷菓株式会社 横山栄一郎氏

事務所名:

横山冷菓株式会社

代表者:

代表取締役:横山 栄一郎

本店所在地:

富山県黒部市

開業年:

1948年

従業員数:

49名

Q.現在の事業内容を教えてください

「アイスクリームの製造および卸業をやっております。創業者である祖父が昭和23年に個人事業として起業したのがはじまりで、当時は甘い氷の棒のようなものを販売していたと聞いています。肉まんや冷凍食品を取り扱う同業他社が多い中、アイス一筋75年でやって参りました。

とにかく祖父が二足の草鞋は履かないという方針で、それが今もずっと続いているという感じですね。何かチャンスがあれば別の事業展開を視野に入れることもあるかもしれませんが、今のところは自分がしっかりと業績を固めなければと考えています。」

Q.御社の成功要因を分析すると、どうなりますか?

「正直、それほど競合がいないようにも思います。もちろんアイス業界にも大手は存在していて、売上の9割を十数社が占めているという状況ではあるのですが、弊社のような規模の会社は全国的にもそれほど多くはありません。1980年代頃であれば色々な会社があったのかもしれませんが、当時から我々は自社製造かつ自社の販売網で地元のスーパーなどに卸していましたので、その中でも強かったように思います。問屋が自社で県内消費という、利益が見込めるモデルですよね。

アイスの製造には水を非常に多く使うのですが、そういう意味で富山県は水が豊富でしかも美味しい土地柄ですので、多少のアドバンテージはあるかもしれません。また、大消費地である東京や名古屋、大阪との距離がそれぞれ近いということも強みになっていると思います。やはり輸送のことを考えますと、物流の2024年問題による影響も含めて、例えば九州に比べると有利でしょう。また、富山県は台風や地震などの災害も少ないと言われていますね。

とはいえ、かつては自社品が大半で県内消費というパターンも多かったようです。段々と時代が変わり、例えばスーパーに卸すといっても問屋がアイテムを決めるのではなく、小売業のほうでアイテムを決めるようになってきたので自由に商品を入れられない、つまり自社品が売り辛くなり、業界的には2000年代に入った頃が一番きつかったんじゃないかと思います。

割と今でもOEM主体の工場が多く、自社品を全く持たず下請けオンリーの工場もあるのですが、そうした場合はやはりOEM元の業績やアイテム自体のラインナップにも左右されますから、買い叩かれてしまったりして苦しんだ企業が多かったという話を聞いています。そうした業界全体の売上が低迷していた時期も、弊社はずっとNB商品を持ち続けてきたので、大手に振り回されるだけという事態には陥らず、生き残ることができたということがあるでしょうね。」

Q.同業他社との差別化はどのように考えていますか?

「端的には先程お話した通り、自社品を持っている点かと思いますので、コスト面のお話をいたしますね。原材料費や燃料費の高騰については皆さんもご存知の通りで、今もガンガン上がり続けている状況です。当然これを商品に価格転嫁しなければ苦しい状態になってくるのですが、そこはこの業界の特徴として、大手が牽引してくれているというところがあります。

業界全体の売上としては今年6,000億円が見込まれているのですが、このうち15%ほどをトップの1社が生み出しているという構造ですので、値上げに関しても9割を占める大手が先行してくれるんですよ。今年も最大手が販売している単品の人気アイスが20円ほど値上げしたのですが、弊社のような中小企業は半年から1年遅れで”大手さんも上げたくらいですから”という流れに乗る形で、消費者にも受け入れられやすい訳です。

そういう意味では基本的に”何でお前のところだけ値上げするんだ”とは言われない、差別化としての低価格競争には陥りにくいということはあるかもしれません。例えばコンビニは戦略として比較的値段の高いPB商品を展開していますが、そうしたご褒美スイーツのようなポジションの付加価値がついたアイスについては、今後もまだまだ伸びていくんじゃないでしょうかね。

また、日本のアイスは海外でも人気が高くて凄く売れています。意外に思われるかもしれませんが海外はアイスの種類が少なくて、棒アイスのようなスティック形状のものとカップ、あとは洋画や海外ドラマでよく見る1〜2リットルの大容量品くらいで、日本の繊細な形をしたアイスは人気があるんです。フレーバーも海外のものは大味で、ハーゲンダッツもレシピが異なりますから鼻が利く日本人は海外のものをあまり美味しいとは思いませんよね。海外線の機内やラウンジでハーゲンダッツを食べると、各国でかなり味が違います。

弊社も香港に輸出しているのですが、現地での売価は1.7倍ほどになりますし、加工食品の中では輸出しやすい商品かなという気はしますね。やはりどうしても賞味期限が半年はないと厳しいと言われていて、日本ではアイスに賞味期限はありませんが、海外だと2年くらいが多いと思います。」

Q.過去、もっとも経営が厳しかったとき、どのようなことがありましたか?どう乗り越えましたか?

「私自身は代表就任から2年弱、入社してからは13年目になりますが、やはり最近で言えば厳しかったのはコロナですかね。弊社は業務用商品の取り扱いが多く、レストランや焼肉店など外食産業に出しているアイスが3割〜4割ほどを占めているのですが、コロナで飲食店の休業要請があった時にはそれがゼロに近い状態になりました。2020年が一番酷かったのですが、翌年にまで尾を引いて、いつ終わるのか、どうなるのかという状態でしたね。」

Q.採用、教育など組織論のポリシーはありますか?

「今はまだ定期的な採用を行っていない状況で、これから考えているところではあるのですが、教育という意味ではありきたりながら完全に工場を止めて2日間を社内教育に充てる、ということを毎年やっています。もちろんアイスクリームの製造に関わる部分がメインになりますが、防虫防鼠といった衛生や品質に関わる研修、労働災害防止のための研修なども合わせて実施していますし、健康経営の取り組みとして外部から講師を呼んでいて、昨年は禁煙がテーマでした。

同じく昨年は銀行から資産形成の研修をやらせてくれと頼まれたので来てもらいましたし、今年はパワハラ研修を実施する予定で、色々と取り組んではいますね。また、採用教育とは違いますが、組織という意味で私の考えは、部長や課長などの各所属長クラスにある程度の権限を持たせて、とにかくやってみてくれという方針ではあります。これまではそのような方針で組織運営を行っていなかったので、社員がまだ少し面食らっている様子も見受けられつつ、少しずつ自分で判断するということに慣れてきてくれているようです。

こうした方針に変えたのは、やはり一人でできることは限られている、何でもかんでも自分一人で考えてやっていくのは無理ですから、会社が強くなるとしたら全員の力を使っていかなければいけないという思いがあるからです。社長だけがどんどん突き抜けていっても絶対に無理ですし、社長の顔色を伺って動くのではなく、所属長以下各ポジションの一人一人が方針を踏まえて部署ごとにまとまって動く、そうした方向へ向かって欲しいなと思っているので、評価についてもこの方針に合わせた方法で取り組みはじめています。

具体的には一人一人の評価を所属長が行い、余程おかしな内容でない限りはもう基本的にそのまま口を出さず、それを基にボーナスや昇給を決めるというやり方です。月に1度全体会議を実施していて、その場でも毎回こういう風に会社が変わるよ、頑張った人は上長から評価されて給料が上がるし、そうでない人はそれなりですよ、と言い続けていますので、大体もうみんな方針について理解してくれているのかなと思うんですけどね。」

Q.影響を受けた人は誰ですか?

「これはなかなか難しいですよね、その時々で色々な人から影響を受けているものですから。敢えて一人挙げるとすれば、小山昇さんの本は他社で勤務していた際によく読んでいて、これは自分の会社に戻った時に役立つなと思っていました。リアルなんですよね、薄っぺらくないというか、例えば心から入るのではなく形から入れ、形から入ることで心がついてくるといった言などは、確かにそれが人間の心理だなと感じます。

あとは人ではありませんが、自動車産業でよく言われている三現主義ですかね。現場・現物・現実、やはりリアルな実感を伴うものが自分の性に合っているというのか、根本にあるのかもしれません。また、特定の人物ではありませんが、新卒で入社した際にお世話になった井村屋の方々は、自分にとって社会人としての基礎を育んでもらったという意味での影響が大きかったように思います。別の会社に入社していたら違う考えになっていたでしょうし、礎になっていると感じますね。良い会社へ入れたことに今も感謝しています。

こうして振り返ると、本当にその時々で色々な人からの影響を受けていますね。それこそJCでご一緒した黒川さんもそうですし、2年間議長や委員長を務めた際に関わった方々、中でも同期で他県の議長だった方はウェルビーイングを推進されていて、その影響を受けて健康経営を弊社の企業理念として取り入れましたから、様々な人との出会いが経営に活きた形で影響しているという感じでしょうかね。」

Q.これから生き残っていける企業の条件はどのようなものだと考えますか?

「今の自社目線でのお話にはなりますが、やはり他所と違うことができる、独自の技術などが必要になってくるのかなと思いますね。先程からお伝えしているようにアイス業界は大手が中心ですので、弊社のような企業が資金や設備で勝負をしても絶対に勝てませんので、大手にはできないこういうことができるですとか、これは当社にしかできませんよ、ということが必要なんじゃないのかなと。

例えば大手の製造方法は基本的に、ボタンを一つ押せばあとは機械が動いてやってくれるという世界なのですが、そうした中で弊社のやっている、一部手作業でアイスを作っていますよ、といったことは大手には全くできないことでもありますので、こういったところで勝負をするということだと思いますね。また、もちろん企業規模にもよりますが、チャンスを逃すことがないように判断・決断を早くするということも大事ではないでしょうか。」

Q.今後の展望についてお聞かせください

「社長就任から2年ほどしか経っていないため、経験は浅いですし知識もまだまだ不足しているとは思うのですが、企業理念として新しく掲げた『アイスクリームを通じて幸せを提供する』ということはブレずに追求していきたいです。業界の売上が伸びている中で、弊社にしかできないアイスクリームを作りたいですし、ゆくゆくは香港以外の海外にも展開して、小さくても世界で戦えるような会社にしていくために、もっと頑張っていきたいなと思っています。

日本の和菓子のように、各国それぞれ郷土菓子のようなものがありますが、アイスクリームって世界共通なんですよね。食べ方がわからないということもないでしょうし、大体どういう味なのかなんとなくわかるから食べるのに抵抗もない、食べると凄く美味しいねってなってくれる、手が伸ばしやすいというのはあると思います。

もちろん国内でも引き続き、ブレずに製造卸として、アイス一筋で広く幸せを届けたいですね。もう少し事業基盤が安定したら、移動販売のような地域社会に貢献できる取り組みもどんどん実施したいと考えています。買い物難民など困っている人の助けになることができれば、収支は差し引きゼロでも良いのかなと。」

代表取締役:横山 栄一郎
1981年(昭和56年)7月29日 富山県黒部市生まれ
家族構成 妻・長男(2009)・次男(2011)・長女(2014)・次女(2017)・三男(2023)
趣味 スポーツ観戦、あらゆるスポーツに関する情報収集(特に野球)
信条 なんとかならない なんとかする

略 歴
1981年(昭和56年) 富山県黒部市に生まれる
1997年(平成 8年) 黒部市立鷹施中学校 卒業
2000年(平成12年) 富山県立魚津高等学校 卒業
2004年(平成16年) 青山学院大学経営学部経営学科 卒業
2004年(平成16年)4月 井村屋製菓㈱(現:井村屋㈱) 入社
2010年(平成22年)3月 井村屋製菓㈱ 退社
2010年(平成22年)4月 横山冷菓株式会社  入社
2022年(令和4年) 2月 横山冷菓株式会社 代表取締役社長就任
現在に至る

役 職
・横山冷菓株式会社 代表取締役社長(2022年・令和4年より)
・公益社団法人黒部青年会議所 理事長(2020年)
・公益社団法人日本青年会議所国家グループ次世代教育推進委員会 委員長
(2021年)
・黒部市PTA連絡協議会会長(2024年4月より)